相馬御風と良寛

 相馬御風は、良寛の研究家としてもよく知られています。
 御風の良寛研究は大正5年に糸魚川へ退住してから、晩年までの30数年に及びます。従って、御風の後半生は良寛研究とともにあった、といっても過言ではありません。

 大正5年の春、糸魚川へ帰ったころの御風は、二宮尊徳に関心をもっていましたが、その年の夏、人に薦められて、当時としては最もまとまっていたとされる西郡久吾著『北越偉人沙門良寛全伝』を読みました。
 一読で良寛に心酔した御風は、それ以降、良寛研究に打ち込みます。 良寛の研究は、当時良寛を直接知っていた人、同時代人の記録にはじまり、幕末から明治・大正と進んでいったといわれています。

 御風が研究を始めた大正時代前半、先にあげた『北越偉人沙門良寛全伝』をはじめとして、10冊にあまる著書がすでに刊行されていました。しかし、これら先行の研究・著作に比べ、御風の『大愚良寛』は、分かりやすく、その内容は良寛の生涯とその芸術、思想に及び、広く世に知られた点でも画期的な、不朽の名著といわれています。

良寛と子供の図

良寛と子供の図

御風収集良寛遺品「手毬」

御風収集良寛遺品「手毬」

 御風の良寛研究の特色は『大愚良寛』の緒言にあるように、その目的は「私一個の修養」「私みずからの為め」「もともと私一個の為めの仕事」としてのものであり、研究のための研究、あるいは学術論文のようなものではなく、良寛を慕い、良寛の生き方を学ぼうとするためのものでした。

 

 従って、御風が良寛を語る時、それは自分御風自身の人生の理想を語っているのだといってもよいでしょう。それが当時、「御風良寛」といわれたゆえんです。御風の良寛研究の成果は次に紹介する20冊以上の著書に結実しています。

No.

書名

発行年

出版社

1

『良寛和尚詩歌集』 T07.02.18 春陽堂

2

『大愚良寛』 T07.05.26 春陽堂

3

『良寛和尚遺墨集』 T08.08 春陽堂

4

『良寛和尚尺牘』 T09.12.18 春陽堂

5

『良寛和尚歌集』 T14.01.10 紅玉堂

6

『一茶と良寛と芭蕉』 T14.11.20 春秋社

7

『良寛和尚万葉短歌抄』 T15.12.18 春陽堂

8

『良寛坊物語』 S03.10.10 春秋社

9

『訓訳良寛詩集』 S04.11.28 春陽堂

10

『貞心と千代と蓮月』 S05.02.20 春秋社

11

『良寛さま』 S05.05.08 実業之日本社

12

『良寛と蕩児』 S06.04.25 実業之日本社

13

『良寛百考』 S10.03.20 厚生閣

14

『続良寛さま』 S10.06.01 実業之日本社

15

『良寛と貞心』 S13.07.15 六芸社

16

『良寛和尚』 S13.09.19 厚生閣

17

『良寛和尚・橘曙覧』 S15

18

『一茶と良寛』 S16.09.10 小学館

19

『良寛を語る』 S16.12.27 博文館

20

『良寛さまのお話』 S25.10.10 小峯書店

21

『良寛』 不明