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復興レポート

インタビュー | 特集
ふるさとツナグ絆12「若き消防士」
2021/02/10

 駅北大火から4年の月日が経ち、当時15歳だった岡﨑快陸さんは、守られる立場から“守る立場”へと大きな転身を遂げました。「大好きなふるさとに貢献したい」との想いから地元で夢を叶えた、若き消防士にお話を伺いました。


夢から目標に

糸魚川市消防本部 警防課 令和2年度入署 岡﨑 快陸(おかざき かいり)さん

糸魚川市消防本部 警防課 令和2年度入署 岡﨑 快陸(おかざき かいり)さん

 今から7年前。中学校入学を控えた頃の岡﨑さんは、母親から「消防士、向いてるんじゃない?」と、言われたことがきっかけで、「消防士」という職業を意識するようになりました。岡﨑さんの周りでは、偶然にも現役で活躍している消防士が多く、小学2年生から続けていた野球のおかげで、体力にも自信がありました。そんな漠然とした夢が、大きな目標に変わったのは、中学3年生の12月に発生した駅北大火の時。友人宅へ向かう途中、現地で炎に包まれる駅北地域の様子を目にしました。「炎の恐怖もありましたが、消火活動を行う消防士がとても勇敢で、絶対に自分も消防士になると決めました」。高校へ進学してからは野球を続け、体力づくりにも励む日々。同級生のほとんどが大学進学を選ぼうとも志は変わらず、募集枠「1名」の狭き門に挑みます。長年の想いが通じ、結果は見事合格。昔から、ひたすら机に向かうような勉強は苦手だったと話し、「今思えば、幼い頃から消防士の道を教えてくれていた母に感謝している」と、笑いながら打ち明けます。


消防士として

「こども消防隊」の補助スタッフとしても、活躍する岡﨑さん

「こども消防隊」の補助スタッフとしても、活躍する岡﨑さん

 県内の各自治体で採用された新人消防士は4月からの半年間、新潟市にある消防学校に通い、寮生活を送りながら初任教育研修を受けます。県内から集まった同期たちと、800時間にもおよぶ学科・実技のカリキュラムをこなし、消防士に必要な知識や技術を徹底的に学びます。常に危険と隣り合わせの消防士、決して容易な訓練ではありません。岡﨑さんも、その厳しい訓練を乗り越え、10月から本格的に糸魚川市消防本部での勤務が始まりました。
 車両や機材の点検、整備、現場を想定した訓練といった全体業務の他に、空いた時間でも積極的に先輩たちに声を掛け、救助活動で必要なロープワークの訓練を見てもらいます。消防学校で習った方法だけでは、実際の現場で遅れをとってしまう時もあるそう。先輩たちを見習い、一日でも早く一人前の消防士として出動できるよう、自主訓練をして有事に備えています。実際に、交通事故現場へ出動し、重傷者を目の当たりにした際、見慣れない情景に「消防士は精神的にも強くいなければならない」と改めて感じた岡﨑さん。一方で、「困難な状況から救助できることもまた、消防士としてのやりがいなのではないか」と話します。今後は救急課程研修を受け、救急隊員の資格を取得し、幅広い活躍を目指しています。


日々、成長。

 夢を掴み、目標を実現させた岡﨑さんですが、まだまだスタートラインに立ったばかり。晴れて消防士となった今、新たな目標を伺うと、「消防学校で習った基礎を大事にしながら、現場力や応用力を身につけ、小さなことにも気づけるように視野を広げていきたい」と、初々しい中にも強い意志を見せてくれました。自身の長所は、「落ち込むことがあっても切り替えて、常に前向きでいられるところ」と、話します。時間勝負の職業だからこそ、野球で培った体力と精神力が大いに役立っています。来年度からは、2年目。後輩ができるプレッシャーも感じている、と文字通りに背筋を伸ばす岡﨑さん。いつまでも初心を忘れず、若きホープとして、ふるさとを守ってくれることを期待しています。


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