HOPE糸魚川 - 糸魚川市駅北大火復興情報サイト

復興レポート

インタビュー | 特集
大火のカタリベ9「大久保 峰生さん」
2021/03/10

 駅北大火で自宅と店舗を焼失した大久保さん。代々継ぐ料亭「大久保」(本町)は休業していたものの、駅北地域の古いまちなみを象徴する建物のひとつでした。被災しながらも、観光やイベントでにぎわいを創出してきた大久保さんにお話を伺いました。


抗う余地なく

(一社)糸魚川市観光協会 糸魚川支部 事務局長 大久保 峰生(おおくぼみねお) さん

(一社)糸魚川市観光協会 糸魚川支部 事務局長 大久保 峰生(おおくぼみねお) さん

 大火当日、大久保さんは東京・表参道にある「新潟館ネスパス」で開催される物産イベントに「糸魚川うまいもん会」として参加するため、仲間数人と車に乗り合わせ、東京へ向かっていました。「道中、知人や妻から火災を知らせる電話が何回もかかってきましたが、仕事の時間もあるので、心配しながら車を走らせるしかありませんでした」。しかし、お昼頃には炎が本町通りを越えて延焼していることを知り、観光協会糸魚川支部長からも「戻ってきてくれ」と要請を受け、同乗していた仲間の一人と共に、高崎駅で下車。新幹線で糸魚川へ戻ることにしました。糸魚川駅に着いた15時頃、駅前通りは既に規制線が張られ、自宅の様子を見ることも荷物を持ち出すこともできませんでした。自宅には、長年保管してきたイベントの資料や趣味のコレクション、古くから守られてきた骨董品の数々。全て燃えてしまいましたが、「しゃあない(仕方ない)」という言葉が、大久保さんを冷静にさせました。「頭が真っ白になったというよりは、近所の人達のこと、仕事のこと、明日からの住まいのこと、考えることが山ほどあって年末があっという間だった」と、振り返ります。


駅北に笑顔が集まった日

 大火直後の観光協会は、年末の業務に加え、被災者対応など普段とは違う業務も担っていました。慌ただしい日々でしたが、年明けの1月22日には、被災した本町通りで「糸魚川荒波あんこう祭り」が予定されていました。毎年、観光客や帰省客だけでなく地元の人たちも大勢集まり、にぎわいを見せるイベントです。被災して1か月では、会場周辺のがれき処理も追い付かず、自身も被災者として心休まる状況ではありませんでしたが、「どうにかまちを元気づけなければならない」と奮い立たされた大久保さん。ヒスイ王国館と駅前ロータリーを会場に開催できるよう舵を取りました。毎年同時開催している「荒波あんこうフェア」とともに予定通り行い、観光協会の一員として、職務を全うしました。


好きこそ物の上手なれ

日本海クラシックカーレビューでイベントを盛り上げる大久保さん(2018年)

日本海クラシックカーレビューでイベントを盛り上げる大久保さん(2018年)

 大久保さんからみて、現在の駅北地域は、明らかに近所同士の絆が深まっていると感じるそう。大火を経て、より絆が深まった今、再度糸魚川の観光やイベントを見直すことが増えたと言います。「地域の人や企業が一緒に参画できて、まちが元気になるイベントが理想!」と、熱い想いを語ってくれました。今年で第30回を迎える「日本海クラシックカーレビュー」は、車好きの大久保さんが青年会議所の理事長だった時に単発イベントとして発案し、初回から関わり続けているイベント。周りの協力も得て、今では30年続き、県外からも人を呼ぶ大きなイベントになりました。企画・運営に妥協せず、自分たちが楽しんで取り組むことが、イベントの成長に繋がるのだと感じた大久保さん。「交流人口の拡大や経済効果のためだけにやっていたのでは続かない」と、一石を投じます。最後に、「私は根っからのイベント好き。これからも『人をもてなす心』を大事に、仕事に向き合っていきたい」と、笑顔を見せてくれました。


PDFダウンロード