学校避難訓練のあり方について

更新日:2021年7月5日

学校避難訓練のあり方について

 

 学校避難訓練の方法について少し考えてみませんか?

 現在、行っている避難訓練の内容は、「授業中に非常ベルが鳴る」「先生による避難指示の放送が入る」「押さない、走らない、喋らない、戻らない(おはしも)のルールを守って児童が校庭に避難する」「避難した生徒の人数を数え責任者へ報告する」「ストップウォッチで避難開始から避難完了までのタイムを計測し評価する」という流れでの訓練が多いのではないでしょうか?

 まずは、「何のための訓練なのか」ということを考えてみましょう。一番の目的は、火災等の有事の際に、生徒が安全に避難できるようにするためなのではないでしょうか。そのためには、まず先生方の防災意識の共有、知識・技術の習得が必要になってきます。

 消防へ通報し、消防隊が到着するまで約8分と言われています。その約8分の間に、生徒をどのように避難させ、火災を最小限に抑えることができるかが先生方の役割になってきます。

 そこで、避難時(避難訓練)の先生方の行動についてのポイントをまとめましたのでご紹介します。

 

 

<火災発生>

 ★ 自動火災報知機が発報したら...

  ◎受信機の発報窓(警戒区域)と警戒区域時を照合しましょう。

 

 

 

   ★ 警戒区域図により発報場所が特定できたら出火場所の確認へ向かいます。

◎出火場所の確認は消火器を持参し、直ちに初期消火できるような体制を整えましょう。

◎初期消火の対応、状況報告の伝令を考え出火場所の確認は2人以上で行くように心掛けましょう。

 

 

   ★ 非常放送の実施 

  ①感知場所の放送(自動火災報知機発報の情報周知)

    ※放送を聞いて自分が一番近くに居ると思えば直ぐに現場確認へ急行。

     確認の時間が短縮され、避難、初期消火の対応が早くなります。

  ②火災確定の放送(伝令係からの情報周知)

  ③避難方向の放送(火災の状況を考慮し避難方向を考える)

    ※非常放送を使用しての避難方向指示は難しいかもしれません。

     そのため、一方向の避難経路だけではなく、あらゆるパターンを想定し、即座に避難経路を考え生

   指示できるようにしましょう。

 

  ~ 災害はシナリオ通りには起きません。

            あらゆるパターンを想定し考える力をつけましょう。 ~

 

 

  ★ 119番通報

  ◎火災を感知したら直ちに119番通報をしましょう。

  ~ 延焼が広がらないために、火災を疑った場合は思い切って119番を ~

       ◎通報時は気持ちが焦ると思います。事前に通報用のシナリオを用意しましょう。

 

 

   ★ 生徒への対応 

   ◎生徒に火災発生場所、避難経路を大きな声で伝えましょう。

   ◎避難した生徒の人数の確認。(先生と生徒による前後の確認)

   ◎避難中に不安であろう生徒への声掛け。

 

 

   ★ 初期消火について 

  ~ まずは、学校に設置されている消火器、屋内消火栓の使い方を覚えましょう。

 

  【消火器使用手順】        

  •   ① 安全栓を引き抜く。
  •       ↓

  •     ② ホースをにぎり火元に向ける。

  •       ↓

  •     ③ レバーを握る。

  

 

  ※ポイント

  ・消火器の噴射可能時間は約15~20秒前後です。

   噴射可能時間も考え約3m前後離れた場所から、火の根元に向かって消火しましょう。 

  ・天井に炎が達している場合は、消火不可能と考え直ちに避難しましょう。

   そのため、初期消火を実施する際は、避難経路を確保した後、実施するようにしましょう。

 

 

  【屋内消火栓使用手順】

   ◎屋内消火栓には、操作に2人必要な1号消火栓と1人で操作可能な2号消火栓があります。

    各学校において屋内消火栓がどちらのタイプになるのか確認してみましょう。

 

     (1号消火栓)

  •      ①Aが発信機ボタンを押してポンプを起動。

          ↓

  •      ②Bがホースを延長する。

          ↓

  •      ③Aがバルブを開放。

          ↓

  •      ④Aがホースノズルのコックを開き放水。
  •  

  •      ※1号消火栓はホースがカーテンレール状に

        収納されています。

 

                   

 

 

     (2号消火栓)

  •      ①バルブを開放。

       (バルブを開放するとポンプも自動的に起動する。)

         ↓

  •      ②ホースを延長する。

         ↓

  •      ③ホースノズルのコックを開き放水。
  • ※2号消火栓は1人でもホースを延長しやすいように円状

       に収納されています。

    

 

☆以上を踏まえ実際に避難、消火訓練を実施しスキルアップを図りましょう。

 

       

        屋内消火栓を使用した訓練風景                           訓練用消火器を使用した訓練風景

 

 

   ★ 避難状況について 

 <人数の確認、歩行速度>

◎避難時、生徒は不安な気持ちでいっぱいだと思います。先生は、前だけを見て避難するのではなく、生     徒の避難の様子、危険な場所がないかの確認、生徒への声掛けを実施しながら避難しましょう。

◎避難時の歩行速度についても、生徒がついて来ることができない速度や、遅すぎて生徒同士の間隔が狭     くなり転倒し怪我をするようなことがないように、生徒の状況に合わせながら速度を調整し避難しまし     ょう。

 

    <煙について>

  ◎一酸化炭素中毒・・ごく微量の濃度でめまい、痙攣を起こし濃度が高ければ死に至ることもあります。                    

            火災の焼死者の大半は火傷のための死亡ではなく、煙を吸って意識不明になり炎

            に襲われ死亡すると言われています。       

 

      ◎煙の拡散速度・・・煙の上昇速度は毎秒3m~5m。

            水平方向へは毎秒0.3m~0.8m。

   煙は床から40㎝程の高さには停滞しない。

                         

  「ハンカチで口を覆い、低い姿勢で避難する」

 

 

 ★ 排煙作業 

  火災時の煙は、上記でも説明したとおり危険で、さらに避難に支障を来たすばかりではなく同時に消防 

  活動の妨げにもなります。そのため、排煙設備や窓から煙を逃がすことが火災の被害を軽減するうえで重

  要になります。

 

 ★ 防火戸 

   火災時に、火災の延焼や煙、ガスの流入を防止するという役割を持っています。

   学校内にある防火戸の場所を把握し、火災時は防火戸を閉め被害の軽減、避難の時間確保に務めましょう。

 

   ★ 屋外階段  

    学校内に屋外階段がある場合は、事前に設置場所を把握し、実災害時には屋外階を使用しての避難も考慮  

  しましょう。また、避難時、最後の人は必ず扉を閉めるようにしましょう。

     これは、屋内に酸素を流入し火災を拡大させないためです。

 

 ★ ベランダ、屋上への避難 

      避難経路が火炎、煙で塞がれてしまった場合は、屋上またはベランダへの避難を考えましょう。

      避難後は直ちに、大きな声で助けを呼び、救助者へ避難者の存在をアピールしましょう。

       ベランダに救助袋がある場合は、落ち着いて救助袋を設定し下部へ避難しましょう。

 

 ★ まとめ   

  訓練を積み重ね、その結果、生徒自身が状況を見て、即座に「避難しなければいけない」と考え率

  先して準備をし、一分一秒でも早く避難できるような学校避難体制を作りましょう。

 そのためには、先生方の防災意識の共有、知識の習得、技術を向上させ基盤を作ることが大切に

  ります。

 いろいろな種類の消防設備が設置され充実していても、使用用途、使用方法を理解していな

 ければ何も意味がありません。命を守るために一人一人が理解し訓練を積み重ね、いざとい

 うときに使用できるようにしましょう。