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復興レポート

インタビュー | 特集
キーパーソン・インタビュー2「(一社)新潟経済社会リサーチセンター 研究部長 江口 知章氏」
2021/12/01

 駅北大火から5年。糸魚川市の復旧・復興にご尽力いただいた方々から、「災害に強いまち」「にぎわいのあるまち」「住み続けられるまち」づくりに係る活動のあゆみと想いを伺います。

 今回は、大火後のまちのにぎわいと活力創出に向けて助言をいただいた江口先生にお話を伺いました。


プロフィール
(一社)新潟経済社会リサーチセンター 研究部長 江口 知章(えぐち ともあき)氏

(一社)新潟経済社会リサーチセンター
研究部長 江口 知章(えぐち ともあき)氏

新潟県阿賀野市生まれ。大学卒業後、1991年に㈱第四銀行に入行。その後、1996年に(一財)新潟経済リサーチセンターに出向し、2001年に主管研究員、2011年に研究部長となり現在に至る。県内各地の観光活性化支援や集客・販売促進手法の支援をはじめ、経済・経営・IT等各種分野に精通するコンサルタントとして活躍。そのほか、各種講演会や社員教育の講師、商工会議所・商工会などの専門家派遣なども務める。

主な研究・活動分野
・観光地の活性化
・顧客満足度、社員満足度調査の実施
・販路開拓支援のアドバイス など


駅北地区ににぎわいを

具体的な「にぎわいのあるまちづくり」を検討し、委員の皆さんが提案している様子

具体的な「にぎわいのあるまちづくり」を検討し、委員の皆さんが提案している様子
第2回 駅北復興まちづくり市民会議(2018.8.31/糸魚川商工会議所)

 江口さんが研究部長を務める一般社団法人 新潟経済社会リサーチセンターは、新潟県内の経済・産業・企業経営と社会環境の実態や変化に関する調査・研究を行い、経済社会の健全な発展に寄与することを目的とした研究機関です。江口さんからは、当市が駅北復興まちづくり計画を策定する際に検討委員会に参画していただき、方針のひとつである『にぎわいのあるまち』に焦点を当てて助言していただきました。
 また、「駅北復興まちづくり市民会議(2018~2019年)」ではアドバイザーとして『にぎわい』のイメージの具体化に向けて、様々な研究結果や県内外の事例を参加者へ共有していただき、復興への糸口を見出してくださいました。


多くの視点を大切に

糸魚川市の2021年1月1日の人口構成(住民基本台帳ベース、総人口)

糸魚川市の2021年1月1日の人口構成(住民基本台帳ベース、総人口)

 駅北復興まちづくり計画策定当初、まちづくりという時間がかかるものに対して、復興とにぎわい、それぞれでも大変な2つの課題を短期間で同時に考えなければならなかったことには苦労したそうです。
 また、「まちのにぎわいには、住民と観光客、事業者と創業希望者など、多くの視点があることは意識していた」と、語ります。糸魚川市の人口構成比率を見ると、60~70代の比率が高くなっていますが、今後若い世代を流出させず、人口ピラミッドの角度をゆるやかにしていくことを考えると、子育て世代へのフォローも必須となります。江口さんは、各年代と人口を考慮したうえで、意見の偏りがないよう心掛け、悩みながらも方向性を定めていきました。「にぎわいはコントロールしにくい分野なので、『絶対』がない。“箱(施設)”をつくって終わりにはしたくなかったので、形にこだわらず、運用方法や関係者同士の連携といった仕組みづくりを重視していた」と、振り返りました。

にぎわいの定義についてグループごとに発表した後、江口さんから講評していただいている様子

にぎわいの定義についてグループごとに発表した後、江口さんから講評していただいている様子
第4回 駅北復興まちづくり市民会議(2018.11.6/糸魚川商工会議所)


先を見据えた暮らし方の提案

 キターレが完成し、新たなにぎわいや人との交流に注目がいく一方で、新型コロナウイルス感染症の拡大により人の流れが滞りました。「全国的に自粛生活を余儀なくされ、都心から地方への移住を決断した人も多くいる中で、一部の自治体では新たなライフスタイルのひとつとして、半分本業をやりながら、半分は自分の得意なことや興味のあることに費やすという生き方に、関心が高まっている」と、話す江口さん。
 温泉街の旅館業者を例に挙げ、『半宿半X』という取組が実際に行われていると教えてくださいました。「(温泉街の方々のように)子どもや孫に地域を残したいと考えると、5年・10年先を見据えて、地域に目を向け行動するようになる。今はにぎわいに直接つながらないことでも、自分にとっての半Xを見つけて行動する人が増えると、後々地域としても良いまちになっていくのでは」と、提案します。続けて、「新幹線・温泉・海水浴場・スキー場などが揃っている糸魚川市は、他から見ても魅力的なまちなのに人口が減っている。人口が減ってくると、市外との交流をより意識しなければならない」と、示唆。実際にコロナ禍でも励んでいる事業者は、人のつながりや体験を大事にしている傾向があるとし、「これからは足元の取組に加えて、数年先に目を向けるとともに、市内外の方々との連携も、より重視して欲しい」とエールを送ります。

駅北復興まちづくり計画評価委員会(2020.3.24/市役所)

駅北復興まちづくり計画評価委員会(2020.3.24/市役所)


無理のない範囲で、長く健全に

 市民会議や駅北まちづくり会議で議論を重ね、2020年10月「駅北まちづくり戦略」を策定しました。長期化する取組において、「指標をしっかりと築き、それを基にコツコツと継続していくのは大切なこと」と、話す江口さん。
 今年度、復興まちづくりの取組が評価され、駅北地区が都市景観大賞特別賞を受賞したことについては、「これまで頑張って積み重ねてきたことが証となり、非常に良かった。引き続き、無理のない範囲で進めてもらいたい」と、喜んでくださいました。
 また、およそ2年間のコロナ禍を経て、今後のにぎわいづくりについては工夫の積み重ねが必要と見解を示します。「人が一か所に大勢集まって…という形ではなく、見どころが沢山あって回遊性を持たせた地域が経済効果を生んでいる事例もある。市全体で豊かなまちにしていくことを願っています」と、新しいにぎわいづくりに向けて期待の声をいただきました。


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