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復興レポート

インタビュー | 特集
大火のカタリベ8「新七地区の皆さん」
2020/11/11

 今回お話を伺ったのは、毎月第3金曜日に駅北復興住宅の1階交流スペースで開催している「新七カフェ」に参加する新七区の皆さん。カフェの最後に毎回行われる「茶話会」の中で、前区長の鷲澤さんをはじめとする被災を経験した9人の方から、駅北大火と復興をテーマに語り合っていただきました。

新七区の皆さん(取材時のみマスクを外しています)

新七区の皆さん(取材時のみマスクを外しています)


忘れもしない日

 「新七カフェ」は区民の方を対象に、今年の6月から始まったシニア世代向けサロン。90分の中で軽い体操やゲーム、脳トレなどをして、健康維持と住民同士の交流を目的に楽しく活動しています。取材当日も、保健師の指導のもとエクササイズを行い、笑顔で声を掛け合っている様子がとても印象的でした。
 駅北大火で被災した新七区は、被災エリアを南北に走る市道銀行西線~仲道線を境にして西側に位置します。出火当時を振り返っていただくと、多くの方が「まさか新七まで火がくるとは思っていなかった」と声を揃えます。土地勘があるからこその「大丈夫だろう」という憶測と、周囲から伝えられる一刻を争う緊迫感には大きなギャップが生じていました。「糸魚川にいる私より、東京でテレビの報道を見ていた娘の方が慌てて連絡をしてきました」と、話す方も。密接した古い木造住宅に囲まれ、その奥にあるまちなみがどうなっているか見当もつかなかった区民の方々は、警察官や自衛官、消防団、親戚、市から避難を促されながらも、被害の大きさに気付くまでには時間がかかりました。


「悔やみきれない」

 新七区の住民が避難勧告を受けたのは、出火から約2時間後。もし、被災することが予知できていたならば、その2時間で持ち出せた大切なものは山ほどありました。しかし、様子を見ようと外へ出たらそのまま市民会館まで避難を促された方、足が不自由な旦那さんを連れ出すことで精一杯だった方、本町通りから糸魚川駅前に並ぶ消防車の数をみて「これならすぐ消えるわ」と安心感すら抱いていた方など、誰もがまた翌日には自宅に戻って、普段通りの生活を送るつもりでした。「避難先で『次に備えて、大事なものは風呂敷に包んでおくべきだね』と話していて、規制が解除された日に、さて戻ろうと思ったら家が無かった。悲しいと思う時間もなかったよ」という言葉が出ると、深く頷く皆さん。南からの強風で延焼範囲が拡大していったことや、大量放水により必要な消防水利の水量が不足していたことにも言及し、前区長の鷲澤さんは、「大火当日は朝から仕事で糸魚川を離れていた。急いで戻ったけれど、既に立ち入り規制中で、区民の皆さんに何もしてあげられなかった」と悔しさをあらわにしました。


駅北を離れた2年間

10月の「新七カフェ」にて

10月の「新七カフェ」にて

 大火後の数日間は、知り合いや親戚の家で過ごしていたという皆さん。頼れる親戚が近くにいなかったという方も市民会館や上刈会館、ホワイトクリフなどの公共施設で過ごすことができました。市は、いち早く被災した方々に気兼ねない生活を送ってもらえるように世帯ごとに面会。要望を聞き、それぞれに合ったみなし仮設住宅を用意しました。被災者にとって、60年以上の思い出と過ごした自宅が焼失し、慣れ親しんだ新七区を離れ、知り合いのいない地域に暮らすことはとても寂しく、勇気がいることでした。しかし、みなし仮設住宅で過ごした2年間を振り返ると、「(入居先の)地域に大変温かく受け入れてもらった」「市が親切かつ素早く動いてくれていた」「希望した条件のアパートに入れてもらえた」などと、感謝の声や明るい意見が飛び交いました。大火以前から、地区の旅行に出掛けたり、おまんた祭りの市民流しに参加したり、仲間意識が強かったという新七区。自宅を再建するなどして再び新七区に戻り、気心知れた仲間と「新七カフェ」で楽しい時間を過ごせるようになったことは非常に嬉しいと、皆さんお互いの顔を見合わせながら話してくれました。


にぎわいへのエール

 大火からもうすぐ4年の月日が経とうとしています。都合により、新七を離れることになった仲間、店仕舞いをすることになった馴染みの商店もありました。「生まれたところから離れたくない」「もとのところに帰りたい」「昔からの知り合いがいるから」といった想いが叶った皆さんは、今でも新七区に暮らしています。近隣に駅北広場「キターレ」が完成したことで、毎週火曜日に行われている体操教室に通ったり、散歩コースにしていたり、日常に新たな習慣が生まれているようでした。「あとは、スーパーが出来てくれたらいいんだけどね」という意見が出ると、「そうそう~!」と盛り上がる女性陣。「自転車にも乗れなくなったら、どうしよう」と悩む方に対して、「困った時にはタクシー使っちゃうよ!」「私は宅配サービス利用しているわ!」と先輩女性たちが元気にアドバイスしていました。
 最後に駅北地域の復興について伺うと、「まだまだ復興途中で、にぎわいまでの道が長いということは、昔の駅北地域の暮らしを知っている私たちが一番痛感している」と示唆されます。駅北地域のにぎわいには、シニア世代の力も不可欠です。これからも先人の知恵を借りながら、幅広い世代に応じたまちづくりに励んでいきましょう。


Information

新七カフェ

新型コロナウイルス感染対策をして、開催しています。
マスク着用の上、ご参加ください。

と き/毎月第3金曜日 9:30~11:00
ところ/駅北復興住宅 1階交流スペース
参加費/無料
   (新七区以外で参加される方は100円)
主 催/新七区

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