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復興レポート

インタビュー | 特集
大火のカタリベ5「女性消防団員」
2019/08/14

 「消防団」という言葉を耳にすると、火災時に消火活動を行う男性消防団員のイメージが先行し、女性の消防団員がどのような役割を担っているのか、あまり知られていないのではないでしょうか。糸魚川市消防団に入団している女性の割合は全体の2%。今年、そのわずかな女性団員の中から初めて団本部予防部長が誕生しました。今回は女性消防団員をまとめるお二人に話を伺いました。


輝く女性消防団員

糸魚川市消防団本部 予防部長 木嶋 正子(きじま まさこ)さん

糸魚川市消防団本部 予防部長 木嶋 正子(きじま まさこ)さん

 女性消防団員は、災害の予防を呼びかける予防部に所属し、女性分団として組織されています。普段は、地域の防災訓練や一般家庭を訪問しての防火診断。火災時には、現場指揮本部に入り、情報収集等の後方支援が主な役割です。現在、新潟県の消防団員数は兵庫県に次いで全国2位となっていますが、その数は年々減っており、全国的にも減少傾向にあります。しかし、その一方で女性団員数は増えており、需要は高まっています。2人は、平成16年の糸魚川市女性消防団員発足時に入団し、15年間糸魚川を見守ってきました。木嶋さんは、「当時の消防長の奥様と知り合い、中谷さんを含めた数人と一緒に勧誘されたのがきっかけでした。入団すると災害に関する知識や救急救命時の対応を覚えることができて、勉強になっています」と振り返ります。今年から「女性分団と予防部の懸け橋になってほしい」と団本部予防部長に任命され、前任者に教わりながら慌ただしい春を過ごしていたという木嶋さん。同じく4月から女性分団長に任命された中谷さんは、「仕事や家事を調整しながら出席してくださる女性団員の皆さんには、本当に助けられています」と述べ、それぞれ周りのサポートを受けながら、生き生きと職務を全うしています。


ひとりの消防団員として

糸魚川市消防団女性分団 分団長 中谷 美代子(なかや みよこ)さん

糸魚川市消防団女性分団 分団長 中谷 美代子(なかや みよこ)さん

 消防団は自分の仕事を持ちながら活動する非常勤の消防機関です。駅北大火の出火時は、二人とも会社の勤務中でした。偶然にも仕事で出火元付近の北越銀行に来ていた木嶋さんは、いち早く出火を知りましたが、既に消防団が動いていたため、この時はしばらくしたら鎮火するだろうと思っていました。消防団の全団員に出動が発令された第4次出動時、火災の規模区分が最も大きい場合に発令する要請だったことから、事の大きさを感じ取ります。女性団員は消火活動には参加しなくても良いとされていましたが、「何ができるか分からないけれど、『消防団員』だから」という想いから、現場と連絡を取り、勤務を抜けての出動を決断。他の女性団員にも要請し、自身の安全を守ることと、すべて現場指揮本部より指示を仰ぐことを伝えました。午後1時頃木嶋さんが到着すると、「現場指揮本部に入った情報を全て記録するように」と指示を受けます。被災状況のメモを取り、市外から駆けつけた警察や自衛隊に近隣の地図を見せ場所を教えるという任務は、夕方の6時頃まで息つく間もなく続きました。見慣れた街並みが次々と焼け落ちていく姿を眼前に、「恐怖心よりとにかく早く火が消えてもらいたいという一心で、雨でも降ってくれれば…」と祈り続けるしかありませんでした。


女性ならではの苦悩と強み

 中谷さんは、木嶋さんからの連絡を受け、急いで現場に向かいましたが、度重なる飛び火により、指示を受けるはずの現場指揮本部が移動していて、たどり着けませんでした。混乱する現場を見てとっさに状況判断し、マスコミ関係者や、被災地域に暮らす方の親族、見物人などによって溢れる人員の整理をしようと決めます。被災者の避難経路を確保するため、市民の安全を守るため、迅速な消火活動を行うため、様々な想いで声を出し、懸命に対応する中で、中谷さんは悔しい想いをしたといいます。「ロープを張って『入らないでください』と何度大声で叫んでも、入ってくる方がいて。男性の警察官が一喝すると言うことを聞いてくれるのに、女性の消防団員というだけで軽んじられることが残念でした」。
 その一方で、女性だからこそできる気遣いなど、ソフトな面を必要とされる場面も多くあるそう。平成29年7月に能生川の堤防が決壊した際には、「避難所に物資を届ける役割は女性にお願いしたい」と消防本部から依頼を受けました。自分たち女性であれば被災者に安心も届けられると分かり、「できることには全力で取り組んでいきたい」と強く決意した中谷さん。現在行っている木造住宅密集地区一般家庭防火診断や火災警報器の点検に加え、これからは一人暮らしの高齢者のお宅を回って、少しずつでも心のケアをしていくことを検討しています。

 


正しい知識で命を守れるように

女性消防団員 図上訓練の様子

女性消防団員 図上訓練の様子

 女性団員には災害時の行動として既存のマニュアルが運用されていましたが、駅北大火のような大規模の災害で出動した経験を元に、定例会においてマニュアルの再確認を行いました。従来どおりの後方支援活動に加え、木嶋さんが大火で実際に任された、時系列で正確にメモを取り伝達するための訓練や地区ごとの避難者、負傷者の人数など、被災状況の確認をする訓練を新しく導入することが決まり、計画的に実施しています。今年6月23日に、大雨による土砂災害、河川氾濫、浸水被害などを想定した糸魚川市総合防災訓練が行われ、95地区、約5,600世帯・10,000人の市民が参加しました。本年度は「避難の声かけ、安全の確認」をキャッチフレーズに、地域の要配慮者を含め、地域内での声掛けにより避難する取組や安全を確保する訓練を重点的に実施するなど、大火で学んだ自助と共助の重要性を再認識しました。大火の発生により、市民の防災意識は高まったように見えますが、二人の目から見ると、まだまだ底上げが必要だといいます。「訓練をしていないと実際に災害が起きた時にどうすればいいか分からない(木嶋)」。「私たちも訓練で勉強してできることが増えてきている。防災意識を持つことの第一歩として地域で行われている訓練を活用してほしい(中谷)」。災害はいつ起こるか分かりません。自分の命は自分で守れるよう、強い意志を持ってできることから始めていきましょう。

 

Information
昨年の防災フェアの様子

昨年の防災フェアの様子

消防・防災フェア2019
期日/9月8日(日) 10:00~14:00
場所/糸魚川駅前通り
内容/初期消火・煙体験のほか、飲食・物販など

子どもから大人まで楽しく学んで、災害に備えましょう。ぜひ、ご来場ください!

 

あなたのチカラを待っています!

あなたのチカラを待っています!

消防団員募集
「自分たちのまちは自分たちで守る」という精神に基づき、活動しています。地域の安全を守る重要な役割を担うため、ぜひ入団をお願いします。(18歳から入団可能です)
【問合先】糸魚川市消防本部 消防防災課 庶務係
TEL025-552-2311 E-mail fd@city.itoigawa.lg.jp

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