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復興レポート

インタビュー | 特集
商店街のココロ粋7「鶴来家」
2019/06/12

 江戸時代から200年以上の歴史を持つ老舗割烹「鶴来家」。大火で多くの文化財とともに店舗を焼失してしまいましたが、今年4月に元の場所で“新生鶴来家”として新たなスタートを切りました。今回は5代目店主の青木社長に話を伺いました。


「鶴来家の旗を降ろしたくない」

鶴来家 代表取締役社長 青木 孝夫(あおきたかお)さん

鶴来家 代表取締役社長 青木 孝夫(あおきたかお)さん

 青木さんが火災の一報を受けたのは、東京で器を仕入れている最中のことでした。強風によって延焼範囲が広がったことを知り、慌てて帰りの新幹線に飛び乗ります。店舗に火が入ったと連絡があったのは、その直後のこと。車内での約2時間は、まずは自分がしっかりしなければと気持ちを整理しました。今後の身の振り方を考えた時に、運行当時から任されてきたえちごトキめきリゾート『雪月花』への食事提供に強い想い入れがあったため、諦めることはできませんでした。翌日、雪月花運行元のえちごトキめき鉄道㈱にも「予定通り食事を提供させてほしい」と連絡したところ、「やってもらえるなら待っています」という心強い答えに、信頼関係を実感したといいます。年明け最初の運行日まではおよそ2週間という短い期間でしたが、大至急自宅の敷地内に調理場を仮設。安心して任せてもらえるよう、密に連絡を取り合い、雪月花へ念願の料理を届けることが出来たのでした。


全国から届く励ましの声

 雪月花のお客様アンケートによると、鶴来家の趣向を凝らした食事に対する満足度はなんと99%以上。今ではその声が励みだと語る青木さんですが、再建に向けてクラウドファンディングで資金を募ることになった際も、わずか2日目にして目標金額を達成するという驚きの結果だったそう。出資してくれた方へ感謝の手紙を綴ると、四国や九州など遠方からわざわざ訪れてくれる方もいました。宮崎県在住で自身も同時期に熊本地震の被害に遭った農場の方とは、「直筆のお礼状が届いたのは初めてだったそうで、今でも特産品を送り合い、交流が続いています」と嬉しそうに話します。インターネットやテレビ放送が想像以上に反響を呼び、全国から励ましの声を聞けたことは何よりの収穫だったとし、「これからも応援してもらえる鶴来家でありたい」と強く意気込みを語りました。


新生鶴来家として

店内には昔の看板が。門柱は、大火で焼け残った貴重な財産。

店内には昔の看板が。門柱は、大火で焼け残った貴重な財産。

 お座敷からは目線の高さで海が楽しめ、日本海と夕日を眺められるテラスも設けられた新店舗。もともと焼失前と同じものを建てるつもりはなく、和の雰囲気を取り入れつつも現代的な感覚や流行を取り入れた「ハイ・コンテンポラリー」な空間にこだわり、まるで現代美術館を思わせる料亭へと生まれ変わりました。若い人にも食事に来てもらえるように、こだわりのスイーツやグッズをお土産用に販売することも検討しています。市道を拡幅させるために敷地の一部を提供してほしいと市から相談されたときは葛藤もありましたが、「にぎわいのトライアングル」のひとつとして役立ちたいという想いから承諾。焼け残った門柱から店舗周辺を一般開放して、ひとの回遊性にも寄与しています。「先を見据えて、次世代の人を信頼していきたい。そうすることで糸魚川も活性化していくのでは」という言葉には、時代を超えて地域に愛される鶴来家の秘訣が垣間見えるようでした。

 


Information

日本料理 鶴来家
糸魚川市大町2-13-1
TEL.025-552-2233
ランチ 11:00~14:00(13:30L.O)
ディナー 17:00~22:00(要予約)

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