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復興レポート

インタビュー | 特集
縁の下のチカラ持ち8「武藤 正樹さん」
2021/08/25

 鎮火まで約30時間にも及んだ駅北大火。現場を離れられない消防隊員のために、24時間体制で消火活動を支えた中田石油株式会社の武藤さんに当時の様子を伺いました。


迅速な対応

中田石油株式会社 糸魚川給油所(寺町) 所長 武藤 正樹(ぶとう まさき)さん

中田石油株式会社 糸魚川給油所(寺町) 所長 武藤 正樹(ぶとう まさき)さん

 中田石油株式会社は、新潟県、長野県内に全9店舗、市内では、早川、押上、寺町、上刈の4地区にガソリンスタンドを所有し、会社設立当時から石油類の販売を通じて市民生活をサポートしています。
 市内で唯一、16kLの大型タンクローリを2台と軽油100kL、灯油200kL等の自社油槽所(地上タンク)を持っているため、災害時でも安定した燃料供給ができるようになっています。
 駅北大火当日、寺町の糸魚川給油所で勤務中だった武藤さんは、鳴り響くサイレンの音で火災の発生を知りました。1~2時間程度で鎮火するだろうと通常業務にあたっていましたが、南からの強風にあおられ延焼が拡大していると聞き、とにかく被害が最小限に収まることを願っていました。しばらくして社長から電話が入り、「(押上以外の)3店舗は24時間体制で営業してほしい」と指示を受けた武藤さん。すぐに各店へ連絡し、連携を取りました。店舗の場所は離れていても、スタッフ同士はシフトによって普段から行き来している同社。災害時だからと言って、特別なマニュアルに沿って動いたわけではなく、普段からいつでもすぐに連絡を取り合い、臨機応変に動ける体制が整っていました。


一刻も早く供給を

 消防本部とも連絡を取り、勤務体制について情報を共有しました。各店舗は店頭給油に3人ずつ配置し、交替で仮眠を取りながら営業。特に現場に近い糸魚川給油所は、応援スタッフが携行缶でポンプ機の燃料を現場まで配達。武藤さんはタンクローリで現場に向かい、県内外から来た消防車両に1台ずつ巡回給油をしました。一刻を争う中で、車両ごとに位置が異なる給油口を間違ってはいけない緊張感と共に、「もしも火の粉が駅前通りを越えてしまったら住宅が密接している寺町一帯も…という恐怖心があった」と当時の心境を打ち明ける武藤さん。あっという間に感じた一晩でしたが、「これやっておくからね」「こっち行くね」等と、前向きな発言と行動で士気を高めてくれていたスタッフや、気温が下がった夜中、消火活動で濡れて震えながら給油をしに来るひたむきな消防隊員の姿はとても印象的で、今でもよく覚えていると話します。


常にお客様第一で

タンクローリ(写真左)から消防車に巡回給油を行っている時の様子(武藤さん撮影写真)

タンクローリ(写真左)から消防車に巡回給油を行っている時の様子(武藤さん撮影写真)

 糸魚川給油所では、カーケアサービスやレンタカー業務にも力を入れています。レンタカー利用者の大半は、ビジネス目的で訪れる県外からの方だそう。大火からしばらくは、その後を心配する声が多く寄せられ、要望があれば、駅までの送り迎えの際に被災地を経由して帰ったこともありました。武藤さんは「『できることはやる』というのが会社の方針。全て当たり前のことをやっただけなんです」と、謙虚に当時を振り返ります。
 最後は、「普段でも災害時でも、一人ひとりのお客様を大切にして、地域に必要とされる企業になれるよう、日々努力していきたい」と語り、笑顔を見せてくれました。


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