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復興レポート

インタビュー | 特集
商店街のココロ粋10「そば処 金七」
2021/05/12

 明治の創業以来、代々受け継がれてきた看板を守るのは4代目店主の山岸栄治さん。駅北大火当日は、消防関係者の休憩所として店舗を貸し出し、炊き出し活動を行いました。明るい山岸さんと奥様の典子さんに当時の様子を伺いました。


穏やかな時間が一転

そば処 金七 店主 駅前銀座商店街振興組合 理事長 山岸 栄治(やまぎしえいじ)さん

そば処 金七 店主 駅前銀座商店街振興組合 理事長 山岸 栄治(やまぎしえいじ)さん

 飲食店や小売店とともに、住宅も多い駅北地区。平日の午前中は、近隣住民が銀行や郵便局へ向かう姿、玄関先の手入れをする姿が見られ、週末の夜とは違った穏やかな時間が流れています。4年前の大火当日、年末の束の間の休息を自宅でもある店舗で過ごしていた栄治さん。「突然鳴り響いたサイレンと生暖かい南風が重なって、嫌な予感がしました。近くで火事だって言うから見に行ったら、10分ぐらいでみるみる別の家の瓦に燃え移って…。予想できない飛び火に焦りました」。店舗に戻り、自身も屋根に上がって、ホースで水を撒こうとしましたが、ここぞという時にホースが詰まって水は出ず、慌てるばかりでした。


困った時はおたがいさま

 正午過ぎ、強まる南風や飛び火などにより延焼拡大が確認され、現場指揮本部は、消防団の第4出動、中越・下越地域への応援要請を発令。応援隊は、消火隊の交替要員や、駅前通り東側(金七の店舗側)への延焼防止のために消防車で壁をつくることなどが求められました。長丁場をこなす消防隊員には、休憩所としてヒスイ王国館が割り当てられていましたが、金七の店舗近くで消火にあたっていた消防隊員の一人から「お手洗いを貸して欲しい」と言われ、そのまま休憩所として貸し出すことにした栄治さん。「長岡や三条から糸魚川のために大勢きてくれて心強かった。お店も営業できる状況ではなかったし、土地勘もないだろうから、どうぞどうぞという気持ちでした」。


消火活動の一助となれば

当時を振り返る典子さん

当時を振り返る典子さん

 午後3時頃、出入りする消防隊員との会話の中で夕飯や軽食の用意がないことを知った山岸さんご夫婦。簡単なものなら出せるからと親戚の斉藤さんと吉田さんと一緒に炊き出し活動を始めます。「とにかく素早くお腹を満たしてもらいたい想いから塩むすびと漬物、温かいお茶を用意しました」。大皿に出しても、気持ちいいほどすぐになくなる塩むすび。夫婦顔を見合わせ、「2升炊きの炊飯器で何回炊いたか分からない!」と、話します。手伝いに来てくれた親戚の2人も、鎮圧の情報が入る夜9時までひたすら握り続けてくれました。その後も消防隊員が交替する度、夜中の2時まで一人で握り続けた典子さん。「駅前通りから東側方面に燃え広がらずに済んだのは、消防の皆さんのおかげ。少しでも自分にできることがあって良かった」と、胸をなでおろします。


様々な立場でまちに関わっていく

 駅北大火以降、典子さんは、強風の日はまた火災になるのではと、なかなか恐怖心が拭えなかったそう。店舗から見える本町通りや瓦礫を処理する工事音もまた、恐怖心を煽りました。しかし、そんな日々の中で勇気づけられることも多くありました。視察で駅北地区を訪れた方が、多くの住民に「がんばってね」と声を掛けてくれたり、地元のお店を利用してくれたり。また、店舗を休憩所として利用していた三条市の消防職員が、「炊き出しをしてくれて助かったから」と、お蕎麦を食べに来てくれました。大火からの4年間を振り返った栄治さん。「いざという時も、にぎわいをつくろうという時も、商売をしている人だけでなく、最後は住民の力が必要。肩をぶつけて歩くような商店街をもう一度目指していきたいね」と、笑顔で語ってくれました。


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Information

そば処 金七
糸魚川市大町2-5-5
(日本海口から徒歩3分)
TEL.025-552-0065

定休日 日曜・第3木曜 
営 業 11:00~14:00
駐車場 10台