中学校におけるいじめの問題と対応について
 平成25年度、市内中学校の生徒がいじめにあい、精神疾患を発症し、長期に不登校となりました。第三者委員会によるいじめの調査と検証及び再発防止策を講じること等の要望が生徒の保護者からあり、「いじめ問題専門委員会」を平成26年8月に組織し、調査委員に調査を依頼し、調査の結果報告が平成27年2月にありました。調査結果は、以下の通りです。

 いじめは、児童生徒の心身の健全な成長及び人格の形成に大きな影響を与えるとともに、いじめを受けた児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害し、その身体または生命に重大な危険を及ぼすおそれのある行為です。

教育委員会は、いじめ問題専門委員会からの指摘、提言を重く受け止め、今回の案件を教訓として反省すべき点を改善し、いじめの防止に向けた取組を進めて参ります。

■調査報告書の概要(平成27年2月26日報告)
1 いじめ問題専門委員会の調査事項
(1) じめの事実の有無
(2) いじめと該当生徒の症状及び不登校の因果関係
(3) いじめに対する学校及び教育委員会の対応の妥当性

2 いじめの事実の有無
 生徒は、言葉によるからかいやからかい行為を訴えた。調査の結果、いじめの事実があったことが確認されました。

3 いじめと該当生徒の症状及び不登校の因果関係
 医師の診察において「いじめを受けた生徒の体調不良は、ストレスによるものであり、心因性の疾患による」と診断されています。不登校の開始要因といじめとの関連を認めています。

4 学校と教育委員会の対応の妥当性
 学校と市教育委員会の対応の妥当性については、以下のように指摘を受けています。
(1)学校の対応について
ア.いじめや不登校に関する校内支援体制のシステムが策定されているが、実際に機能するかという点について危機意識が不足し、いじめの発見と認知、及びその情報の迅速な確認と実行が後手に回り、今回の実態に至ったと考えられる。
イ.校長は、本事案の状況を生徒からの訴えがあってから2か月間、把握しておらず、いじめを受けた生徒の保護者との面談は、保護者が学校に説明や面談を求めた後の平成26年3月中旬以降であり、保護者の学校に対する不信感を招いた。
ウ.学校評議員会で生徒の個人情報を説明するなど保護者の不信感を募らせる結果を招き、保護者の気持ち、生徒の不安などに十分な配慮ができていなかったと思われてもやむを得ない。
エ.いじめの問題の発生時において、担任、教頭、その他の教職員が適切に行動することにつながらなかったことが大きな問題である。
オ.生徒理解やいじめに関する問題意識も低いと言わざるを得ず、対応の遅れ、他人任せ、個人的な判断で対応などの問題が背景にある。

(2)教育委員会の対応について
ア.学校からのいじめや不登校に関する情報入手が徹底されておらず、その結果、学校への指導が不十分であった。
イ.当事案の初期対応は、保護者からの相談があってからであり、対応が遅く不信感を招いた。
ウ.県教育委員会の指導を受け、適切な体制づくりを進めていることは評価できるが、今回の対応は遅きに失したことは否めず、今回の検証を行い、今後の防止や適切かつ迅速な対応のための体制の拡充が肝要である。

5 報告書のまとめ
 「不幸にも起きてしまった本事案を契機として、学校に関わるすべての関係者(生徒・学校長以下の教職員・教育委員会)が、「いじめ」が基本的人権をないがしろにする行為であることを改めて強く自覚し、いじめの根絶に向けた一層の努力を重ね、人間社会を生きる一人一人が明るく健全に生活できる環境が整うことを願ってやまない。」

■ いじめの対応について
 糸魚川市教育委員会では、いじめ問題専門委員会からの意見、報告を重く受け止めています。
 このような事案が発生したことは遺憾であり、市教育委員会では、反省点を整理し、対策・取組を進めます。

1 反省点の整理
「学校」
(1)生徒理解及び生徒に応じた適切な対応が不十分である。
(2)いじめについての理解が不十分で、これぐらいは問題ではないという甘い認識であった。
(3)いじめに対する対応の知識、実践できる能力が不十分である。
(4)保護者への適切な伝え方に関する教職員の知識・技能が不十分である。
(5)個人の判断、対応となっており、学校組織の理解が不十分である。
(6)管理職がいじめの対応の点検が不十分である。
(7)関係保護者に対し、誰が何をどのように伝えるか、組織での対応が不十分である。
(8)上司への報告、連絡、相談、決定する仕組みと文書記録がないなど意志決定が不明確である。
(9)いじめ対策委員会に特別支援コーディネーターが関わっていない。
(10)いじめを認知した職員がいじめ対策委員会に速やかに報告していない。
(11)対応について上司からの指示、指導が不十分である。
(12)市教委にいじめ・不登校の報告が確実になされていない。
(13)生徒指導部会がいじめ・不登校等の対応策に追われ、いじめの予防策の協議が不十分である。
(14)いじめを生まない学校・学級風土づくりへの取組が不十分である。
(15)学校評議員会において軽率な発言があった。
(16)学年・学級PTAとの連携が不十分である。
(17)被害者・加害者の話合いが行われず、解決への道筋が不明確である。

「教育委員会」
(1)各校からの報告の点検が不十分である。
(2)調査が不十分で学校の報告のみとしていた。
(3)教育委員会内での情報共有が不十分である。
(4)学校の問題を把握するのが遅く、適切な初期対応に対する指導が不十分である。
(5)いじめ問題への認識が甘く、教育委員、市長への報告が遅い。
(6)教育委員会内の危機対応のスキル、知識が不十分である。
(7)報告の文書記録がないなど対応の意志決定があいまいである。

2 対策
(1)教職員がいじめの理解を深めるため、いじめに関する研修会を実施する。
(2)相談員、ハートフル相談員を配置し、生徒・保護者に対する相談体制の充実を図る。
(3)教職員によるいじめへの指導、また取組を進めるため、市独自のスクールソーシャルワーカーを配置する。スクールソーシャルワーカーは、学校のいじめ・不登校対策への具体的アドバイス、教職員への研修、保護者との相談等を行う。
(4)学校のいじめ対策委員会の構成員に必要に応じて外部関係者が関われるよう、市教育委員会がその紹介をし、体制の拡充を図る。
(5)教育委員会と中学校が連携したいじめの取組を図るため、教育委員会指導主事による学校への訪問回数を増やす。

3 いじめ防止の基本理念
 糸魚川市いじめ防止条例において、『いじめが児童等の心身の健全な成長及び人格の形成に大きな影響を与えるとともに、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利を著しく侵害し、その身体又は生命に重大な危険を及ぼすおそれのある行為であるため、いじめは、深刻な人権侵害であることを認識し、児童等が互いに認め合い、支え合い、高め合う人間関係を築くことができるよう糸魚川市、糸魚川市教育委員会、学校、保護者、市民等及びその他の関係者が、それぞれの役割を自覚して連携し、学校の内外を問わずいじめが行われなくなるようにすることを旨としなければならない』と掲げています。

 関連リンク 糸魚川市いじめ防止条例

4 いじめ防止基本方針及びいじめの防止行動計画
 市、学校、家庭、地域その他の関係者が、それぞれの役割を自覚して連携し、いじめのない社会の実現に向けて取り組むものです。

(1)いじめの防止の取組
 ア いじめに対する市民や児童生徒の意識を高めます。
 イ いじめに対する教職員の資質能力の向上を図ります。
 ウ 児童生徒の道徳性、社会性をはぐくみます。
 エ 家庭での教育の支援を図ります。
(2)いじめの早期発見の取組
 ア 学校、地域全体で児童生徒を見守り、心身の状況の把握に努めます。
 イ 児童生徒、保護者の悩みや不安の解消を図ります。
(3)いじめへの対処の取組
 学校、教育委員会、関係機関と連携して、速やかに対応を図ります。
(4)いじめ防止のために関係する機関、団体等との連携の取組
 関係機関、団体と連携して、いじめの防止等の取組を推進します。
(5)いじめ防止等の対策と評価
 いじめの防止等の取組を評価し、より有効な取組への見直しを図ります。

5 平成27年度重点的に取り組む内容
(1)教職員研修
 ア 児童生徒へ適切に対応できる資質能力を高めます。
 イ 教職員一人一人の人権意識を高めます。
(2)いじめの防止に関する道徳教育、人権教育
 道徳教育、人権教育を充実し、いじめの防止を図ります。
(3)いじめに関する情報共有
 いじめに関する情報を校内で共有し、適切に保護者に伝えます。
(4)指導体制の充実
 定期的に市教育委員会が学校の取組を確認し、指導します。
(5)相談体制の充実
 児童生徒の悩みや相談の解消のため、相談体制の充実を図ります。

関連リンク 糸魚川市いじめ防止基本方針