糸魚川地域地熱資源調査事業

更新日:2023年12月6日

大野地区を中心とした範囲において、出力2,000kW級の発電を目的とした地熱資源開発調査を、平成26年度から28年度の3か年間実施しました。
3か年の調査では、構造試錐井の掘削も行いましたが、透水性のある構造に逢着せず、また、噴気試験及び追加の坑内調査も難しいため、市としては、大野地域における地熱資源開発可能地調査を終了いたしました。

これまでの調査結果について、民間事業者に情報提供を行い、事業者を支援していくことで、当市の地熱発電開発を促進していきます。


■調査位置
新潟県糸魚川市姫川周辺
調査位置

 ■助成事業費の概要                   (単位:千円)

 
 調査費
(JOGMEC全額助成)
 申請手数料他
(市負担)
合計
平成26年度 39,344 39,344
平成27年度 337,181

232

337,413
平成28年度  12,097 166  12,263
合計 388,622 398 389,020

 ※JOGMECとは、「独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構」という経済産業省所管の独立行政法人

 

平成26年度実施 地質断裂系調査・重力調査・電磁法探査

平成26年度は、地熱資源量を評価するために、地表調査として地質断裂系調査、重力調査、電磁法探査(MT法)及び地化学調査を実施し、得られた知見を基に総合解析を行って資源量評価・地熱資源有望域の絞り込みを行った。

■地質断裂系および地化学調査
・地質調査範囲およびルート

地質調査範囲
 

■電磁探査
・調査位置図
電磁探査範囲

 

■重力探査
・測点位置図
重力探査位置図 

 

平成27年度実施 構造試錐井掘削調査

 構造試錐井を掘削し、また、付随する調査を行うことで糸魚川地域の地熱資源の賦存状況を調査し、将来地熱発電所を建設する際の可能性を探ることを目的に掘削工事を行った。

 1,350メートルまで掘削した構造試錐井(ITG-1)は、透水性のある構造に逢着せず、また、温度・圧力検層を行うため、測定器を降下したが、深度866mで降下不能となり、噴気試験及び追加の坑内調査が難しい状況となった。

平成27年度実施 総合解析業務

 平成27年度に実施された構造試錐井掘削調査により新たに得られた情報と、昨年度の調査で得られた情報を用いて,総合解析(地質図更新,地熱構造モデル更新,貯留層解析,地熱資源有望域の検討,仮噴気試験計画(案)の作成,総合評価)を実施した。

(1)地質図の更新

 構造試錐井掘削で得られた情報を基に,地質断面図及び地質平面図の更新を行った。調査地域周辺は,糸魚川-静岡構造線を構成するNNW-SSE走向の断層と,それを横切る胴切り断層が存在する複雑な地質構造が推定された。構造試錐井ITG-1はこれらの断層に囲まれたブロックに掘削されている。
 既存温泉井との坑井地質の比較から,構造試錐井ITG-1では地層境界の出現深度は深くなるものの,基本的な地質層序は一致しており,同様の地質構造が南側に連続している可能性が示唆された。

坑井間地質対比図
温度比較
(2)地熱構造モデル更新
 既存坑井や構造試錐井ITG-1のデータから,本地域において地熱貯留層を構成する断裂構造は,先新第三系中に発達する割れ目と考えられる。一方,新第三系に発達する断裂構造は,流体流動を規制する要因となっている可能性が考えられる。
 本地域はプレートの沈み込みに関連した複雑な地質構造を有しており,富士火山帯,乗鞍火山帯の各火山配列の延長上に位置している。本地域の地下深部にはこれらの第四紀火山列に関係したマグマが存在しており,これが熱源となっている可能性が考えられるが,今後も検討が必要である。
 本地域に産出する温泉水は,地下水がグリーンタフ層中を通過する際に海水成分を溶かし込んで温泉になったと考えられる。これらの温泉水の大部分は天水が起源であり,外部からの熱水の供給が期待できる。
 以上のことから,本地域では,地下深部に浸透した天水が,地下深部に推定される熱源からの伝導熱などで温められて上昇し,地層中の成分やメタンを溶存しつつ流動して地熱貯留層を形成していると考えられる。
 本年度の掘削調査において,構造試錐井ITG-1では貯留層の存在を確認することはできなかったが,既存温泉井との坑井地質の比較から,構造試錐井ITG-1では地層境界の出現深度は深くなるものの,基本的な地質層序は一致しており,より深部には地熱貯留層が存在している可能性が考えられる。地熱構造モデル模式図

(3)貯留層解析
 構造試錐井ITG-1において熱水の湧出が確認された場合,推定される地下温度と透水性などの情報から,坑内流動シミュレーションなどを行い,平成28年度に予定する仮噴気試験で期待される生産量を推定する計画であった。しかしながら,構造試錐井ITG-1では,全坑加圧を含め,数回にわたって熱水の汲み上げ試験を試みたが自噴には至なかった。
 構造試錐井ITG-1は地熱貯留層に逢着しなかったが,1号井及び2号井の坑井地質との対比から,構造試錐井ITG-1では地層の出現深度は深くなる傾向が見られるものの,基本的な地層の出現傾向は一致していることが明らかになった。このことは,構造試錐井ITG-1周辺でも,より深部には地熱貯留層が存在している可能性を示唆しているものと考えられる。

(4)地熱資源有望域の検討
 本年度の調査では,昨年度の調査で抽出した掘削ターゲットに向かって構造試錐井ITG-1が掘削されたが,地熱貯留層には逢着しなかった。しかしながら,本調査地域では既存温泉井である糸魚川温泉1号井及び2号井周辺の地下構造と同様の構造が,より南側まで連続している可能性が示された。
 すなわち,断層⑤と⑥に挟まれた浅部低比抵抗域と重力基盤の急傾斜部が重なった部分で,糸魚川温泉1号井,2号井の温泉帯水層(標高-1,000~-1,300m付近)よりも深部で浅部低比抵抗域の下部に推定される高温域が地熱資源の有望域と考えられる。貯留層の上面深度は,既存温泉井より南側では深くなると考えられる。
 一方で,本地域には断裂構造が複雑に発達しており,側方方向への地層の連続性は良くないと考えられた。さらに,調査範囲内では更新世以降の表層堆積物の影響で地質構造を直接観察することができないため,地下構造を推定できるだけの情報を得ることが難しい。また,地熱有望域を抽出したものの,本年度実施された坑井掘削調査結果からは地熱流体の流動を規制する断裂系の分布や走向などについての情報は得られていない。
 今後,さらなる調査が必要と考えられるが,地質構造を含めた地熱系の全体像を把握するためには,調査範囲内の地下構造をより詳細に調査することが必要と思われる。地熱有望域

(5)仮噴気試験計画(案)の作成
 構造試錐井ITG-1が噴気した場合に備え,次年度に予定されていた仮噴気試験計画について,試験計画案の検討を行った。
 なお,今回の調査では掘削中に逸泥が確認されず,また,掘削後に注水を行ったが,透水性が確認されなかった事から,仮噴気試験を実施する可能性は低いが,今後,新規の構造試錐井掘削を行った際の参考になると考える。
仮噴気試験設備 

平成28年度 構造試錐井埋坑工事

今後、追加の調査が難しことから、構造試錐井を埋坑することとした。

掘削直後の坑内検層で坑内の閉塞が確認され、本工事では閉塞深度以浅の埋坑を計画したが、掘削時の高比重泥水が砂利投入の際に沈降を妨げる要因となったため、深度260メートルより浅い深度からの埋め立てとなった。

砂利や砂及びセメントによる埋坑で地上部と地下を遮断閉塞した。